9月19日の朝日新聞デジタルに、「台風、地震… 頻発する災害で傷つき失われる歴史資料、どう守る?」という記事が出ています。
近年頻発する自然災害により、全国各地で貴重な歴史資料の保管が窮地に陥っていますが、災害時は人命第一です。歴史資料が後回しになるのは、やむを得ません。
そもそも博物館や美術館、図書館などの保管庫は、スペースの都合や搬出搬入の関係の都合上、多くの場合は地下に作られることが多いので、その時点で災害時に水没等被災する可能性は高いわけです。保管庫を新設する際に、少なくとも地下ではなく、立地が許せば高台で、縦建物の2階以上に設置できれば、かなりリスクは下がりますが、まったく新規に保管庫が設置されることは多くないでしょうから、新たな保管庫が確保できるとすれば、既存施設の空きスペースということにならざるを得ないでしょう。そうだとすると、物によって置き場所を検討することでリスクを減らすようにするしかないわけです。
一番無理がきくのは埋蔵文化財資料でしょう。具体的には石器や、陶磁器の類、土器も物によっては多少水没しても大丈夫のものもありますが、これらは仮に水没して泥をかぶっても、洗い流せば済む場合が多いので、建物の地下または1階に保管するようにするしかないでしょう(そもそも重いですから、上階には上げられないわけです)。
木製品や金属製品も少しくらいなら水に濡れても大丈夫でしょうが、後のメンテナスが大変なので、できれば濡れない場所に保管したいものですが、一番濡らしたくないのは、紙資料です。紙は濡れるとくっついてしまうので、できれば上階に置きたいですが、一番量が多い資料でもあり、量によっては重さもかなりのものになるので、どうしても地下や1階になりがちですが、貴重なものは別置して濡れない場所に置きたいですね。
9月20日の朝日新聞デジタルには、「ぬれた古文書を修復、デジタル保存も 市民に広がる歴史資料の救い手」という記事が出ています。
行政に頼るのは、もはや時代遅れです。地元の人間にとって大事なものは、市民の手で守ることが一番ですので、一人でも多くの市民ボランティアが育ってくることは大切ですね。
20日の記事にもありますが、紙資料が実際に濡れてしまっても、レスキューの技術は確立されています。全史料協や各地の文化財ネットワークなどで、レスキューのノウハウを持った人たちにつながることができるので、実際に被災したら、ノウハウを持った人たちに助けを求めることが一番です。
現在は全国で保存されている歴史資料は非常に多いので、どうしても被災の可能性は高まります。すべてを救うことが不可能であり、それゆえ、ある程度失う資料が出てくるのも仕方がないことだと思います。多少失う歴史資料があるのは仕方がないことを前提に、保存上、レスキュー上の優先順位を決めておいた方が良いでしょう。
9月21日付け朝日新聞デジタルには、「出土品は増え続け、収蔵庫はあふれる どこにしまう問題に悩む自治体」、22日付けでは「「整理」される民具 人々が暮らしてきた歴史を未来に伝えるには」として記事が出ています。歴史資料の保存は難しいですが、あるものすべてを保存しようとすると無理が生じるのも事実です。トリアージと同じで、優先順位の高いものを残すという発想で臨むしかないでしょうね。