続・人間老いやすく、学成りがたし: #論文
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2023/08/29

音楽演奏の評価は、耳で聴く音よりも「視覚」が優劣に影響する⁉

 8月26日の朝日新聞デジタルに、「吹コンの評価を決するのは音ではない? 検証:世界を揺るがした研究」という記事が出ています。

 ネタのもとになっているのは、結論として「音楽演奏の評価には、耳で聴く音よりも「視覚」が優劣に影響するとする」とした「Sight over sound in the judgment of music performance」という論文で、この現象は「サイト・オーバー・サウンド効果」と名付けられています。

 演奏の評価にあたっては「音が重要」とするのがもちろんなんですが、過去の音楽コンクールのファイナリスト3人の演奏について、音のみのデータと映像のみのデータで優勝が誰かを判定してもらうと、プロでも映像のみの方が正解率が高く、音と映像でも映像のみの方が良かったという結果が出たという実験結果です。つまり、映像のみが一番結果が良かったということです。

 社会的判断は、視覚情報と聴覚情報の両方に基づいて行われ、聴覚情報が意識的に評価されている場合でも、視覚情報が優位にあるということで、これは正直納得のいく結論ですね。現在はすっかり映像が多い時代ですが、音楽を聴く際にも、ただ音を聞くだけよりも映像付きの方が楽しいですよね。歌手や演奏家のパフォーマスだけではなく、歌っている時の表情だったり、演奏している時の動きだったりが「カッコイイ」ってことはよくあります。

 朝日の記事は吹奏楽の話ですが、この論文を受けて来年あたりから吹奏楽コンクールでのパフォーマンスが変わってくるところが出てくるのでしょうか?あるいは、この論文をもとに研究することで今までとは違ったところが上位に上ってくるという動きはあるのか気になりますね。 

2023/07/23

インドのカレー文化が東南アジアに入ったのは約2千年前!

 7月21日付けの「Science」のNEWSに、”Curry may have landed in Southeast Asia 2000 years ago,Spices found on stone tools shed light on ancient global trade network”という記事が出ています(22日付けの朝日新聞デジタルでも「2千年前にカレーが渡来か ベトナム古代遺跡の調理器具にスパイス」とあります)。この記事の元論文は、”Earliest curry in Southeast Asia and the global spice trade 2000 years ago” SCIENCE ADVANCES 21 Jul 2023 Vol 9, Issue 29です(「Science」NEWSでも、十分わかりますが、より詳細な内容を知りたい際には、上記の論文リンクで確認してください)。

 西暦1世紀から7世紀まで存在した扶南王国の主要港であったOc Eo(オークエオ)遺跡から発見されたfooted grinding slab、現在のインドでも見られるスパイスをひくためのすり台、footedですからそれに脚がついた石器に付着した植物の痕跡のなかに、ターメリック、クローブ、シナモン、ナツメグ、ショウガなどのスパイスが発見されたということです。

 これらのスパイスは、まさに「カレー」の材料なわけですが、さらにココナッツの痕跡も確認されており、このことはOc Eoで使用されるスパイスがココナッツミルクでとろみをつけられていたことを示唆しており、これは現代の東南アジアのカレーに特徴的な手法であることから、今日使用されているカレーのレシピは、古代から大きく変わっていないことがわかったわけです。

2023/07/19

男女の分業についての固定観念をくつがえしてくれる発見は、いかに我々がジェンダーバイアスにとらわれているかを示してくれます。

  7月16日の朝日新聞デジタルに、「「男が狩り」「女は採集」は誤解? 9千年前のペルーに女性ハンター」という記事が出ています。

 「米カリフォルニア大の研究チームは2020年、ペルーのアンデス高地の約9千年前の遺跡で、ハンターと見られる10代後半の女性の遺体が見つかったと発表」、それを受けて、同チームが「アメリカ大陸の近い時代の遺跡から見つかった400人以上の記録を改めて分析したところ、狩猟具とともに埋葬された27人のうち、4割にあたる11人が女性だったことを突き止めた」との論文を、米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載したことを紹介するものです。

 狩猟採集社会における男女の分業については、1960年代にカナダや米国の人類学者らが出版した論文集「Man the Hunter(狩猟者である男性)」などをきっかけに支持されるようになり、各地に残る現代の狩猟採集社会の研究も進み、この主張に沿った男女の分業を示す報告が増えましたが、一方で狩りをする女性は例外的な存在と考えられてきました。しかし、”Female hunters of the early Americas”と題するこの論文によると、「学者たちは、私たちの種の進化の過去において、現代のジェンダー行動がどの程度存在していたのかを理解することに長い間取り組んできました。多くの研究は、現代のジェンダー概念が過去のジェンダー概念を反映していないことが多いという主張を支持しています」、「初期の狩猟採集民が経験した生態学的条件は、女性と男性の両方が幅広く参加する大物狩猟経済に有利に働いていたであろうことが示唆されています」、「アメリカ大陸の初期の女性が大物狩猟者であったことを明らかにしています」とされています。

 現代においても男性よりも運動神経の優れた女性は多くいますし、特に当時のような狩猟の能力が重要視される時代においては、男性だろうと女性だろうと、狩りがうまい人間が狩猟を行うことで食料が確保されたわけですから、当たり前なはずなのですが、現代のジェンダーバイアスにとらわれていると、こういう事実も見逃す、もしくは否定することになってしまいがちですので、このような発見は我々にとって非常に良い情報です。

2023/07/08

「グラスの厚さが変わると、飲み物の味が変わる」が、科学的に立証されました。

 6月29日の朝日新聞デジタルに、「厚いグラスで飲んだ緑茶は甘い?苦い? 舌だけではない味覚の複雑さ」という記事が出ています。

 昔からお酒を飲む際に、特にビールはグラスによって味わいが変わるという話はあったように思います。ビールは、泡が命ですので、その泡がうまく立ってビールの液体部分を蓋をしてくれることで、炭酸が抜けにくくなり、またその泡が唇にあたる具合によってまた風味が変わるみたいな話があり、特にビールにこだわりがある個人や飲食店ではグラスにこだわることがあるように思いますが、それは経験上の話でした。

 それが、今回中央大学の有賀敦紀教授と松下光司教授が、北海道大学大学院生の市村風花さん,東京大学の元木康介講師との共同研究において,飲料を飲むときのグラスの厚みが緑茶の味に影響を与えることを、科学的に証明し、”Food and Humanity”Volume 1, December 2023,Pages 180-187に、 ”The tactile thickness of the lip and weight of a glass can modulate sensory perception of tea beverage” として掲載されました(中央大学のプレスリリースはこちら。ジャーナルの論文を読まなくても、このプレスリリースで内容はほぼわかります)。

 実験は緑茶で行われ、厚いグラスで飲んだ緑茶は薄いグラスで飲んだ緑茶よりも甘く、薄いグラスで飲んだ緑茶は厚いグラスで飲んだ緑茶よりも苦く評価され」るという結果になったということです。また、「グラスの重さも重要な要因であることがわか」り、「厚みと重さが自然な組み合わせであったとき、緑茶の味覚評価はグラスの厚みの影響を受けることがわか」ったということです。このことから、「レストラン、カフェ、居酒屋などのサービス企業は、自らが望むような甘味や苦味の体験をしてもらうためには,適切な厚みのグラスを選択する必要性」があり、また環境への配慮を目的としたプラスチックストローの削減にふれて、「プラスチックストローと紙製ストローでは唇における触覚が異なるため、消費者は同じ飲料であってもこれまでとは異なる味覚を知覚している可能性」があることから、「環境配慮型のストローがもたらす味覚の変化を調べることの重要性を指摘しており、これに関する今後の研究が期待されます」と述べられています。

 新聞の記事によると、研究のきっかけは、居酒屋に飲みに行った時に「「ビールってグラスが薄い方がおいしく感じる気がしない?」という話で盛り上がった。」ということですから、居酒屋での経験値もまんざらではないわけですが、それをきちんと科学的に立証しようとするあたりが、やはり研究者は違いますね。

2023/06/12

タウリンに、動物の健康寿命を延ばす効果があると報告されました。

 2023年6月9日発行のアメリカの科学雑誌『Science』に、「タウリン欠乏は老化の原因となる(”Taurine deficiency as a driver of aging”)」と題した論文が載っています(6月9日の朝日新聞デジタルにも記事が載っています)。

 タウリンの量は加齢とともに減少します。「15歳のサルは5歳に比べて85%減少し、60歳のヒトは5歳の3分の1程度に減少するなど、加齢によって大幅に減少する」ということです。「ヒトの40歳代にあたる14カ月のマウスに死ぬまで毎日タウリンを与えると、寿命の中央値がメスで12%、オスで10%延びた」ということから、タウリン欠乏が老化の要因であることが特定されたわけです。

 ただし、タウリン欠乏症が人間の老化の原因であるかどうかをテストするには、結果として健康寿命と寿命を測定する、長期にわたる適切に管理されたタウリン補給試験が必要であるということですので、タウリンが人間の老化にきくとは断定できませんが、可能性はあるわけで、少なくとも疲労回復効果は期待できますよね。

 タウリンを多く含む食材として、牡蠣、アサリ、シジミ、ホタテ、ハマグリ、タコ、カニ、イカや、鯵や鯖などの近海魚、ブリやカツオの血合いなどで、水溶性なので、汁ごととれる鍋物やスープ等に利用すると有効に摂取することができますから、積極的に食べるようにしたいなぁと思っています。

2023/04/19

「放流しても⿂は増えない」、良かれと思って行った人為的な介入が、生態系の振る舞いに予期せぬ影響を与えてしまう。

 4月18日の朝日新聞デジタルに、「「放流に悪影響の懸念」論文に反響 著者が伝えたいもう一つのこと」という記事が出ています。

 北海道大学、アメリカのノースカロライナ⼤学などの研究チームが、「⿂のふ化放流は多くの場合で放流対象種を増やす効果はなく、その種を含む⽣物群集を減らすことを明らかに」した研究論文”Intentional release of native species undermines ecological stability”(2023 年 2⽉7⽇公開の「Proceedings of the National Academy ofSciences」誌に掲載)で明らかにした内容をもとに書かれた記事です。なお、「放流しても⿂は増えない」という結果の詳細については、2月9日に北海道大学が出したプレスリリースに詳しく書かれていますので、”Intentional release of native species undermines ecological stability”を読まなくても、概要はつかめます。

 上記プレスリリースによると、この研究で明らかになったポイントは、

・理論・実証分析の双⽅から、河川における放流が⿂類群集に与える影響を検証。

・放流は種内・種間競争の激化を促し、多くの場合で群集構成種を⻑期的に減らすことを解明。

・⿂類資源の回復には、河川等の⽣息環境の改善等の別の抜本的対策が求められることを⽰唆。 

の3つですが、良かれと思って行った人為的な介入が、生態系の振る舞いに予期せぬ影響を与えてしまうことはよくあることで、結果的に自分たちの首を絞めることになるわけです。人類のおごりに対する警告でしょうか。

2023/04/11

サッカーでのヘディング、やばいじゃん!

 4月9日の朝日新聞デジタルに、「サッカー選手、認知症リスク1.6倍 ヘディング影響?キーパーと差」という記事が出ています。

 トップレベルの男性サッカー選手は、一般男性に比べて認知症を発症するリスクが1.6倍に高まっており、ヘディングなどで頭部に衝撃を繰り返し受けることが影響している可能性があるということが、スウェーデン・カロリンスカ研究所の研究で分かったとのことです。

 この研究成果は、週刊総合医学雑誌”The Lancet Public Health”に掲載された”Neurodegenerative disease among male elite football (soccer) players in Sweden: a cohort study”という論文にまとめられ、今回の記事はこの論文が元ネタです。

 「繰り返しヘディングをすることによる頭部への衝撃が、サッカー選手の認知症リスクを高めている可能性がある」という研究結果は、激しくヘディングするシーンなどを見ていて、なんとなく「あれって、頭に何か影響はないのかなぁ?」と思っていた人も多かったろうと思いますが、「あぁ、やっぱりまずかったんだね」と納得すると同時に、恐ろしい結果です。この研究結果が広まれば、サッカー人口、減るんじゃないでしょうか?

2023/03/26

人に興味を持ってコミュニケーションをとることが、人間を生かす原動力なんでしょうね。

 3月23日の朝日新聞デジタルに、「異性への関心低い中高年男性、早死にする傾向? 山形大が2万人分析」という記事が出ています。

 山形県内の7市(上山、山形、東根、酒田、天童、米沢、寒河江)で健康診断を受けた40歳以上の男女約1万9千人(男性約7700人、女性約1万1400人)を対象にした調査で、「異性に関心がないと答えた男性は9年で9・6%が亡くなり、関心があるとした男性の死亡率の5・6%を上回った。この差は、年齢や持病などほかの要因を差し引いて考えたとしても「死亡リスクが高い」と結論づけた。」とする、アメリカのオンライン科学誌『PLOS ONE』に掲載された論文「日本人一般住民における異性への関心の欠如と全死亡率との関連Association between lack of sexual interest and all-cause mortality in a Japanese general population)」で発表した内容に基づく記事です。

 女性のデータからは、「異性への関心と死亡リスクの相関性はみられなかった」ということなのですが、女性は子どもや孫の世話をするということがあるので、異性への関心が低くても、生きがいを持っていたりすると考えられるため、自然に人とコミュニケーションとることが多くなるわけですが、男性は特に異性への関心が低くなるということは、生きがいや気力が減退しているという証で、人とコミュニケーションをとる機会も減っていくと思われるので、だんだん孤独になっていくのでしょう。やはり男性はいくつになっても女性に関心を持つくらいの気力が無いと、「生きる」力が減退していくんでしょうね。そう考えると、女性の方が長生きするというのも納得します。

2023/02/21

現在は、まさに『「現実」主義の陥穽』に陥っていると言えるでしょうね。

 2月20日の朝日新聞デジタルに、「日本は目の前の現実に押し流されていないか 宇野重規さんの問いかけ」という記事が出ています。

 東京大学社会科学研究所の宇野重規教授は、岸田政権が自衛隊に敵基地攻撃能力(反撃能力)を持たせる方向にしている現状を、「丸山眞男がかつて言った、「実際の現実は日々作られているにもかかわらず、現実はすでに与えられたものであって変えることはできないと考えてしまう思考のあり方である『「現実」主義の陥穽(かんせい)』に陥っているのではないでしょうか」と述べています。

 『現実』主義の陥穽」は1952年の論文ですが、まさにその通りだと思います。コロナ対策しかり、また同じく今日2月20日の朝日新聞デジタルに出ている「原発再稼働、賛成51% 震災後初めて賛否が逆転 朝日新聞世論調査」の記事も同じことだと思います。

 東日本大震災から3月11日で12年経つわけですが、「脱原発」がいっこうに進まず、それどころか、原発の新規建設や60年を超える運転を認めることを盛り込んだ「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されるという大きな原子力政策の方向転換も、電気代の高騰という現状の前に人々が屈服してしまっているように思えてなりません。しかし、これは大変危険なことです。想像力を封印してしまうような「現実主義」が大きな勢力となった時、人々は自由な思考を奪われ、「大きな声の人」の意のままになってしまう危険性をはらんでいます。我々は過去の歴史から学び、その問題点に気づいて、自らの頭で考えることが必要です。

2023/02/01

奈良公園の鹿って、独自の存在だったんですね。

  1月31日の朝日新聞デジタルに、「奈良公園の鹿に独自の特徴 千年超の歴史、DNAと資料でしかと確認」という記事が出ています。

 福島大、山形大、奈良教育大の研究チームにより、奈良公園(奈良市)の鹿が、遺伝的に独自性が高い存在であることが分かり、アメリカ哺乳類学会( The American Society of Mammalogists )の学会誌『Journal of Mammalogy』に掲載されたとのことです。論文のタイトルは、”A historic religious sanctuary may have preserved ancestral genetics of Japanese sika deer(Cervus nippon)”歴史的な宗教保護地区がいにしえの ニホンジカの遺伝子系統を守ってきた可能性がある)。この概要は、奈良教育大学が、「【プレスリリース】「奈良のシカ」の起源に迫る ―紀伊半島のニホンジカの遺伝構造とその形成過程―」として、ホームページに掲載しています。

 上記の「研究成果のポイント」によると、

人間活動がニホンジカに与えた影響を検証するために、古くから人間活動の盛んだった紀伊半島の集団を複数の遺伝マーカーで解析しました。

・その結果、紀伊半島には奈良公園、東部、西部の大きく3 つの遺伝的なグループが存在していることが明らかとなりました。

 ・最も遺伝的な独自性が高い奈良公園のグループは、1000年以上前(推定最頻値で約1400年)から周辺集団と交流が無いと推定されました。

 ・以上のことから、奈良公園のニホンジカは、狩猟や開拓によって周辺の集団が消滅するなかで、保護によって1000年以上も維持されてきたことが明らかになりました。

 今までの解釈では、奈良公園のシカは768年に造営された春日大社の神様だからということだったのですが、1400年前となると、奈良に遷都した710年より前、6世紀ごろの古墳時代~飛鳥時代ということで、そんな古くから(当時はまだ奈良公園の影も形もない場所ですが)奈良公園周辺のシカは、人によって守られてきたということなわけです。奈良に都ができてからシカが棲むようになったのではなく、すでにシカが棲みついている場所に都を作ったということになりますが、それって何故なのでしょう?新たな謎ですね。

2022/12/11

200万年前のグリーンランドには、豊かな生態系があった⁉

  今日12月11日の朝日新聞デジタルに、「200万年前の極地に豊かな生態系 「最古」のDNA分析で明らかに」という記事が出ています。有料記事なので、全部読めませんが、ネタ元は『Nature』なので、そちらから詳細を読むことができます。

 『Nature』2022年12月8日号のCover Storyとして出ている「失われた世界:太古の環境DNAが明らかにした200万年前のグリーンランドの生態系の性質」という文章が、もと論文ですね。

 北極に近いグリーンランド北部の、泥や石英からなる約200万年前の地層から、堆積物サンプルを採取し、当時の生物のDNAを抽出し、そこからポプラ、シラカバ、ツガなど100種類以上の植物のDNA片が確認され、中には現代のグリーンランドの気温では自生しないものも含まれ、動物では、ガンやウサギ、ネズミ、トナカイ、カブトガニの仲間や、氷河期で絶滅したとされるゾウの仲間「マストドン」のものも見つかったということです。

 こうした証拠から、現在は極砂漠となっているグリーンランドのこの地域が、現代より11~17°C温暖であったことが裏付けられたということです。また、これまでは永久凍土で見つかった約100万年前マンモスが最古のDNA情報でしたが、今回はさらに古い約200万年前のDNA情報が得られたということも大きな成果です。

 上記のリンク先には、Full Textへのリンクもありますので、詳細を知りたい方は、ご一読ください。

2022/11/20

GABAで学習効果が上がる?大人だと、どうなんでしょうか?

  昨日11月19日の朝日新聞デジタルで、「なぜ子どもはあんなに物覚えがいいの 脳の働きかたに大きな違い発見」という記事が出ています。

 大人はあるテストAの訓練をした直後にBを学ぶと、Bだけ学習してAが消え、両方とも学習するには、AとBの間に数時間空ける必要があるが、子どもは学習訓練を開始するとともに、急速にGABAが上がって学んだことを定着させ、次々に別の課題も学べるということのようです。

 ということは、ポイントは「GABA」だということですよね。以前より、血圧抑制効果があるとされ、GABAのサプリメントやGABA入りの食品とかがありますが、GABAをとれば、大人にも効果があるのか、気になるところです。もう少し詳しい情報が欲しいですね。これの元論文を探してみようかな。とりあえずは、GABA入りのチョコレートあたりを買ってみます😋

2022/10/10

日本の稲作は、1年間に1~4キロで、九州から東北へ伝播した!

  今日10月10日の朝日新聞デジタルに、「稲作、年速1~4キロで日本に浸透 数理考古学が開く新たな地平」という記事が出ています。有料記事なので、初めの部分しか読めませんが。

ネタ元は、アメリカの『SCIENCE ADVANCES』VOLUME 8,ISSUE 38,23 SEP 2022に掲載された"Bayesian analyses of direct radiocarbon dates reveal geographic variations in the rate of rice farming dispersal in prehistoric Japan"です。

 イギリスのケンブリッジ大学や奈良文化財研究所の研究者による共同研究で、弥生時代の132の遺跡から出土した米について、294サンプルの放射性炭素による年代測定のデータを収集して、遺跡同士の距離などのデータとともに数理モデルを構築して解析した結果、「1年間に1~4キロで、九州から東北へ伝播した」との解析結果に至ったそうです。ただ、そのスピードは一様ではなく、人口密度が反映して、西の方の分散速度が速く、東の方で大きな減速があったということです。静岡県近隣の稲作の伝播は、伊勢湾まではスムーズに進んでいたが、一度そこで足踏みがあったと考えられている今までの仮説にもあまり矛盾しない解析結果であり、納得できます。

 より詳細を知りたい方は、上記リンク先で確認してください。

2022/08/30

九州大学の「3Dデジタル生物標本」、おもしろいです‼

  九州大学が、フォトグラメトリ(被写体を様々な角度から複数撮影することで3Dモデルを構築する手法)により、生鮮時のカラフルな状態での生物標本を3Dモデル化し、「バイオフォトグラメトリ」と銘打って、公開しています(公開ページはこちら)。3Dモデルのほとんどは、CC BY 4.0ライセンスで、誰でも自由にダウンロード・利用できます。

 「3Dモデル標本」、拡大縮小ができ、360度ぐりぐり回すことができて、めちゃめちゃおもしろいです😆 本物の標本では見れないような場所まで見れます。

 私は、ただぐりぐりできておもしろがっているだけですが、見る人が見れば、いろいろな気づきがあるでしょうね。もちろん小学生ぐらいの子どもが見れば、好きな子ならば大喜びなのではないでしょうか。小学校の授業でも使えそうですね。

 なお、この研究の詳細は、ブルガリアのPensoft Publishersが出版する国際誌「Research Ideas and Outcomes」の2022年8月8日付けで「Bio-photogrammetry: digitally archiving coloured 3D morphology data of creatures and associated challenges」として掲載されているとのことなので、詳しく知りたい方は上記リンク先でご確認ください。

2022/06/19

「同一土器型式の使用時間の年代差=稲作伝播の時間差」の考え方は、間違いだった!

  6月17日の朝日新聞デジタルに「九州の稲作、30年で北部から南部へ? 「先入観」疑って研究」という記事が出ていたので、熊本大学のホームページで確認をしたら、人文社会科学系の5月23日づけのお知らせに出ていました(「南九州最古のイネ発見 鹿児島県志布志市小迫遺跡出土土器包埋炭化イネの年代測定結果」)。

 熊本大学のお知らせによると、この情報は5月18日発行の『日本考古学』54号に掲載された「鹿児島県志布志市小迫(こざこ)遺跡出土土器から検出した炭化イネの炭素年代値が南九州地方で最も古いことを明らかにし」たものだそうで、文部省科学研究費の学術変革領域研究(A)「土器を掘る」の研究プロジェクトの成果の1つです。

 これまでの日本考古学の定説では、北部九州地方から南九州地方までの稲作伝播の時間差が200~300年間、別の年代観でも100年ほどかかったとされていました。これは、北部九州の福岡県板付遺跡や佐賀県菜畑遺跡などの灌漑水田址に伴う突帯文土器「山の寺・夜臼Ⅰ式土器」の土器付着物の炭素年代測定値と、南九州の最古の刻目突帯文土器である「田布施Ⅰ式土器」の付着物の炭素年代値との年代差から考えられており、「同一土器型式の使用時間の年代差=稲作伝播の時間差」とする考え方が間違いだったわけです。

 また、「土器を掘る」の研究プロジェクトの成果として、人文社会科学系の5月25日づけのお知らせに、「縄文時代の穀物栽培を立証 最新科学による縄文時代晩期末・江辻SX-1段階の大陸系穀物(イネ・アワ・キビ)流入を証明」として、イギリスの考古科学雑誌「Journal of Archaeological Science」に、縄文時代末期にすでにイネやアワが渡来していたという論文を発表したことも出ています(論文名は、「A new archaeological method to reveal the arrival of cereal farming: Development of a new method to extract and date of carbonised material in pottery and its application to the Japanese archaeological context」)。こちらは、弥生時代そのものの定義を再検討する必要につながる成果ですので、九州の稲作の伝播よりも重要なものだと思います。

2022/02/03

「ながら作業」は、効率が低くなる可能性も。

  1月30日づけ朝日新聞DIGITALに、「音楽を聴きながら勉強や運転、効率が低下? 東北大が脳波で研究調査」と題する記事が出てました。ネタ元は、アメリカの科学雑誌「PLOS ONE」に昨年12月20日に公開された「Different contra-sound effects between noise and music stimuli seen in N1m and psychophysical responses」です。

 研究は、左耳にはテスト音を流し、聞こえる度にボタンを押してもらう、同時に右耳にはジャズピアノの音楽または雑音を流し、「脳磁図」と呼ばれる磁場を用いた脳波の計測で反応を調べるもので、雑音の場合には特に影響がなかったが、音楽の場合には音量に関係なく、ボタンを押すまでの時間に遅れが出たという結果が得られたということです。これは音楽の影響で、テスト音への注意が邪魔されたことが原因と考えられるということで、新聞記事のタイトルとなったわけですね。

 論文には最後に、「 it is unknown whether the same results would be obtained with other types of music, such as healing music. 」、ジャスピアノの曲以外でも同じ結果になるかは不明だとしていますが、おそらく多くの人にとっては、ノイズミュージック以外の音楽は同様の結果になるのではないかと想像します。つまり、これは本来聞きたい音以外に、意識が向いてしまう音、音楽はもちろん人の声、または一般的に雑音に類する音でも、その音に意識が向いてしまう音ならば、おそらく影響が出るんだろうと思います。

 早い話が、勉強や重要な作業をするときには、注意力の低下が生じ、作業効率に影響を与えうる可能性があるので、音楽などを聴きながら作業をしないのが良いということになるわけですが、その作業に集中していると、他の音が聞こえなくなることってあると思いますので、集中の程度にもよるんだと思います。

 ただ、そうはいっても、勉強や作業する際に、それだけに集中できる時間ってそれほど長くないですし、気分転換には音楽が欲しいですよね。まぁ、どちらかというと気分転換の時間の方が長かったりするのですが😅

2021/12/21

琉球王国交流史・近代沖縄史料デジタルアーカイブが公開になっています。

  沖縄県教育委員会が「琉球王国交流史・近代沖縄史料デジタルアーカイブ」を公開しました。

 「琉球王国交流史」では、琉球王国の交流を物語る「歴代宝案(れきだいほうあん)」を中心とした交流史料が公開されています。校訂本と訳注本の両方が公開されており、また「歴代宝案編集参考資料」も公開されていたり、シンポジウム論文集や研究雑誌までも公開されていますので、非常に勉強になります。

 「近代沖縄史料」では、近代新聞を公開しています。沖縄初の新聞である「琉球新報」や、沖縄における平民派の機関紙である「沖縄毎日新聞」などが検索できますが、現在はいつの新聞があるかと、記事見出しの検索ができるだけで、残念ながら画像はありません。内容は今後も順次拡充していく予定とのことなので、新聞はぜひ画像を公開してもらいたいですね。まぁ、今は「琉球王国交流史」の方だけでも十分すぎるぐらいの情報がありますので、これだけでも申し分ありませんが、人間どうしても欲が出てしまうので😅

2021/11/14

トランスユーラシア言語は、農耕と共に新石器時代に拡散した!

  昨日11月13日の毎日新聞に、「日本語の原郷は「中国東北部の農耕民」 国際研究チームが発表」という記事が出ていましたが、元ネタは、11月10日にNatureに掲載された、”Triangulation supports agricultural spread of the Transeurasian languagesという論文です。

 この論文は、ドイツのマックス・プランク人類史科学研究所を中心にした、中国、日本、韓国、ヨーロッパ、ニュージーランド、ロシア、米国の研究者を含む国際チームが発表したものです。歴史言語学、考古学および遺伝学の「三角測量」分析によって、言語拡散の「農耕仮説」を学際的に支持し、トランスユーラシア言語の最初の拡散が、東北アジアにおける新石器時代前期のキビ・アワ農耕民の移住と関連すると結論しています。

 この論文、なかなかおもしろいです。韓国の欲知島(ヨグ ジ ド)遺跡出土の女性人骨のDNAが95%縄文という結果が得られたり(韓国がこれをどう受け止めるのか、多少物議になりそうですが)、宮古島の南嶺の長墓遺跡(ながぱかいせき)から出土した人骨(近世および先史時代の2つの時期)から、グスク時代に九州からたくさんの「本土日本人」が農耕と琉球語を持ちながら、琉球列島へ移住したと推定できるなど、従来の説とまったく異なる結論になっています。

 ただ、これは「最初の拡散は新石器時代にあった」ということが言えるというだけで、歴史的にはその後もいろいろと複雑な動きがあります。確かにいろいろと新しいことがわかった一方で、今後の課題も数多く残っていると言えます。これらの課題が今度さらに明らかにされることが期待されます。