続・人間老いやすく、学成りがたし: #書籍
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2023/09/16

今日2023年9月16日は、大杉栄・伊藤野枝・橘宗一没後100年。

  今日9月16日は、大杉らの命日で、今年2023年は没後100年です。

 静岡市の沓谷霊園で、墓前祭が開催されましたが、100年ということで、今年が最後となりました(今日の共同通信に「大杉栄、最後の墓前祭 甘粕事件100年、静岡」と記事が出ています。大杉の甥の大杉豊さんも参加されました)。

 大杉らが憲兵隊に連行されたのは「関東大震災の混乱に乗じて」と言われていますが、何故震災から2週間もたったこの時期に、6歳の橘宗一少年も一緒に連れていかれたのか。確かに東京はまだ混乱していたのは事実でしょうが、あまりにも不自然です。「甘粕事件」と呼ばれるこの事件は、まだまだ謎が多いわけですが、大杉豊さんが9月15日付けの毎日新聞で語っているように、「100年で終わりではなく、その記憶を忘れてはならない」ものだと思います。

 近年、伊藤野枝が見直され、関心が高まっており、今月24日には伊藤野枝・大杉栄らの没後100年を記念するシンポジウム「自由な自己の道を歩いて行こう」が開催されます。対面参加だけではなく、オンラインでの参加も可能ですので(オンライン配信視聴1,800円)、参加してみてはいかがでしょうか。

 また、8月には平凡社から『伊藤野枝セレクション』、『大杉栄セレクション』も刊行されています(Xでも紹介されています)。

 大杉・伊藤の死から100年たっていますが、100年たっても大杉や伊藤が目指した社会は達成されていないと思います。100年を機に多くの人に大杉・伊藤の思想を知ってもらい、この閉塞した現代を変える力が結集されることを期待せずにはおれません。

2023/09/09

「本に親しむ」という意味では、有意義な場所ですね。

  9月6日の中日新聞デジタル静岡版に、「売らない、できるのは立ち読みだけ」という記事が出ています。沼津市を本拠とする「マルサン書店」が、「出張所」として「立ち読みだけ」の書店を今夏、長泉町にオープンしたことを紹介するものです。

 「児童書や学校の課題図書など約600冊の本が並ん」でいて、「本は店の在庫や出版社から借りた商品を置き、定期的に入れ替える」ということで、「担当者は「出張所は1円の利益にもならないが、本が生活の一部になってもらえたら」と話」しています。

 これって、図書館とも違って、本に親しむ新しい形で、個人的にはとても素敵な試みだと思います。ユニークな取り組みですが、でも何でこんなことを思いついたんでしょう?本が大好きな人が考えついたのかもしれませんね。ちょっと、のぞきに行ってみたいなぁ😆

2023/08/24

言葉って生き物だって、実感させられる話です。「国語辞典から消えた言葉」

 8月20日の朝日新聞デジタルに、「祖父が出した国語辞典から消えた言葉 辞書マニアの孫が読み解いた」という記事が出ています。

 「三省堂国語辞典(三国)」の前身である「明解国語辞典(明国)」が生まれたのが1943年で、その明国の改訂版(52年)から、三国8版(2022年)までに「消えた」言葉から厳選した「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」を三省堂編修所との共編著した校閲者、見坊行徳さんのインタビュー記事です。

 「戦後になって、戦争関係の言葉がかなり削られて」、「明国改訂版が出たのが52年で、さらに三国初版の出版が60年。この2版で徹底的に削られている」ということです。

 例として出ている「「ア式蹴球(しゅうきゅう)」「BG」「赤電話」「翔(と)んでる」「MD」」のうち、アソシエーション‐フットボール、つまりサッカーを指す言葉である「ア式蹴球」はわかりませんでしたが、「BG」はたぶんビジネス用語としての「OL」の前に使われていた女性会社員のことを表現する「ビジネス・ガール」かなぁという感じですが、「赤電話」「翔んでる」「MD」は、わかっちゃうなぁ😅

 でも、言葉が生き物だってことがよくわかる話です。非常におもしろいですよね。今、若者言葉として使用されている、既に私には意味がわからない言葉の多くも、辞書にすら載らないで消える言葉も多いのでしょうね。

2023/08/09

「一般と専門家との間にある大きなギャップ」って、いろいろありますよね。

 8月5日の朝日新聞デジタルに出ている「ナチスは「良いこと」もした? 逆張り主張に応答、研究者の危機感」の記事ですが、最近はネットの匿名性によって、中途半端な知識をもとに、いろいろな議論をしている人たちを時折見かけます。

 『検証 ナチスは『良いこと』もしたのか?』、読みましたが、これぞ歴史の専門家の仕事と言えるブックレットで、多角的に非常に詳細な検証を行い、豊富な参考文献も巻末に載せられていて、歴史研究の見本のような本です。

 歴史において、「逆張り」の主張とは非常に多いですが、それを専門家が1つ1つ向き合って論証していくというのはかなり珍しいですし、多くの専門家は、一般との認識にギャップがあることを前提としている部分があるように思いますので、あまり対応しないこと多いわけですが、今回のブックレットはそれを丁寧にやっているという点で、大変貴重な文献になりますね。

 ただ、「一般と専門家との間にある大きなギャップを埋める必要がある、と危機感を感じた」というのは、いちおう私も端くれに居る人なので、それを感じることはありますし、埋めることを試みているつもりですが、現実はなかなかうまくいきません。原則的にそのことについて常に考えている人間と、時折何かに触発されてそのことを話題にする人間とでは、日ごろの意識が違いますし、その差は簡単には埋められない、本来はそのようにあきらめるつもりはなくとも、現実その差を埋める努力は、かなり無謀に思えるのが事実です。その意味でも、本書は大変有意義な一冊です。

2023/08/05

出版の電子化、進むと利用には便利ですが、保存という観点では難しいです。

  8月4日の朝日新聞社説は、「本を読む権利 切なる声にこたえたい」というタイトルです。

 先月芥川賞に決まった市川沙央さんが、芥川賞の会見で述べた「ちょっと生意気なことを言いますけれど、各出版社、学術界でなかなか電子化が進んでいません。障害者対応をもっと真剣に早く取り組んでいただきたいと思っています」を受けての社説です。

 電子書籍は、紙の本のような重さがなく、文字を拡大して読める利点があったり、画面の自動読み上げ機能を使って本を「聞く」ことも可能だったりとメリットがあり、市川沙央さんがいうように、障害のある人にとっては「本を読む権利」が満たされるわけで、大変良いことです。

 社説には、電子化は中小の出版社では追加コストなどがあるとし、手間がかかることや流出への懸念が背景にあるとしていますが、現在は本を作る際は、ほとんどDTPですから、基本的にはデジタルデータで作成するわけです。したがって中小でもコストがかさむどころか、昔に比べれば安くなっているはずです。もちろん、最初からデジタルデータで作成しているので、手間がかかるわけもありません。確かにデジタルデータなので、流出は懸念されますが、それさえ十分な対策をとれば、やたらと流出することも多くないと考えられます(まったく流出しないということはおそらくないですが)。

 むしろ問題になりそうなのは、保存の観点です。紙の本のようにデジタルデータの入ったメディアをその辺にほっておけば、数年後にはおそらく読むことはできないでしょう。保存メディアの媒体自体の保存年限や、保存メディアそのものが旧式になることによる読み取る機械が無くなってしまう可能性、またデジタルデータを読みこむためのソフトが古くなってしまうとかで、結局読めなくなる可能性が高いわけです。今時フロッピーディスクなんて一般にないでしょ?図書館は困りますが、出版社にとれば、むしろ最新版に買い直ししてくれる可能性が高まるので、悪いことではないはずです。

 「従来の商慣行はバリアフリーの要請を退ける理由にはならないはずだ。出版界にはより積極的な行動を求めたい。」としている朝日新聞さん、自分のところは電子化、進めているの?

2023/07/17

朝日新聞の連載「偽りの帝国 満州アヘンマネーを追う」がおもしろいです。

 朝日新聞で「偽りの帝国 満州アヘンマネーを追う」と題した全5回の連載が掲載中です。

 満州国のアヘン問題を題材にした「週刊ヤングマガジン」(講談社)に連載中の「満州アヘンスクワッド」や、故山田豪一さんの未定稿を、旧友の森久男・愛知大学名誉教授が2021年に「続・満洲国の阿片専売」(汲古書院刊)として刊行されて注目されています。

 この連載の7月11日付け第1回に、コメントプラスで編集委員自身のコメントが読めるようになっています。それによると、この連載は「続・満洲国の阿片専売」の刊行がきっかけで取材を始めることになったとのことですが、「取材をすればするほど、眼前の闇が広く深くなっていくのを感じるばかりでした。解明しなければならないことはまだまだまだ多いと痛感しています。」とコメントしています。確かに満州国のアヘン問題はわかっていないことが多く、故山田豪一さん、よくぞ「満洲国の阿片専売-わが満蒙の特殊権益の研究」を刊行し、「続・満洲国の阿片専売」が刊行できるほどの未定稿ができたものです。

 プレミアムA「満州 アヘンでできた“理想郷”」も必見です。こちらでは、「満州を知る10のワード」、「カラー化写真ギャラリー」、「参考文献・クレジット」が確認できます(特集としては、本来こっちがメイン?のような気がしますが…)。

2023/07/10

『地球の歩き方』がおもしろくなっていますね。

 7月5日の朝日新聞デジタルに、「北九州市版「地球の歩き方」来年発売 ディープな町歩きのバイブルに」という記事が出ています。

 「地球の歩き方」といえば、海外旅行には必須のガイドブックですので、どうしても海外版のことばかり考えてしまいますが、国内版がおもしろくなっていますね。国内シリーズは、2020年秋から刊行されているとのことですが、来年2月に「北九州市版」が出版されることになったということです。
 「九州では初めて、「市」単位では全国初」ということですが、福岡や長崎とかなら市単独ってのもなんとなくわかる気がしますが、何故「北九州」?って感じもしますし、「北九州」ってだけで、なんかディープなイメージです。でも、それゆえにおもしろそうです。単純に読み物としておもしろいような気がしますので、出たら買います!

 「地球の歩き方」のホームページを見ると、県版もなかなかおもしろそうですね。東京オリンピックを前に「東京版」が出たというのはわかりますし、北海道、沖縄、京都も納得ですが、東京多摩地域とか埼玉、千葉ってのもなかなかです。県版も注目したいですが、やはり「北九州」市版の後、何市が出るか、それが楽しみです。

2023/06/23

今日6月23日は、戦後78年の「沖縄慰霊の日」

  今日6月23日の朝日新聞の社説は、「沖縄慰霊の日 記憶たぐる営みは今も」というものです。

 沖縄戦の記録を新たに出版する自治体が多くあるということを紹介して、11冊の市町村史の発刊にかかわった元沖縄国際大教授の吉浜忍さんの「後世に残す最後の機会という強い思いが各自治体に共通する。本を通じ実感を持って学んでほしい」という言葉を掲載しています。沖縄に限らず、戦争に関しての記録を残すタイミングとしては、まさに「後世に残す最後の機会」であることは、全国的に同じですが、他の地域はそうであると分かりつつも、なかなか行動に移さないですが、やはり沖縄ではその思いが違いますから、このように実際に行動するのです。

 また「Re:Ron×コメントプラス」でも、「不測の時代を生きるための、転ばぬ先の杖 「沖縄の生活史」を読む」として、5月にみすず書房から出版された『沖縄の生活史』の出版を報じた6月2日付けの記事「100人が語り、聞いた『沖縄の生活史』出版 戦後の暮らし細やかに」に、ジャーナリストの座安あきのさんがコメントプラスに加筆した寄稿を掲載しています。「よくぞ活字に残すことにこだわってくれた」との言葉がありますが、ここでもやはり「後世に残す最後の機会」であるわけですから、この言葉には激しく同意します。

 玉城デニー知事の「戦争体験者が戦争の不条理と残酷さを、後世に語り継いできてくれた実相と教訓を胸に刻み、あらゆる戦争を憎み、二度と沖縄を戦場にしてはならないと、決意を新たにする」とした平和宣言にもあるように、昨年改定された安保3文書により、沖縄を「国家安全保障上極めて重要な位置にある」と明記し、ミサイル部隊など自衛隊の増強などが着々と進むなかで、思いはやはり「二度と沖縄を戦場にしない」ことであると同時に、「戦争体験者が戦争の不条理と残酷さを、後世に語り継いできてくれた実相と教訓を胸に刻み、あらゆる戦争を憎み」、「二度と戦争で国民を悲しませない」ということを、政治家たちには決意してもらいたいものです。

2023/06/15

中央大学山村研究会の創立30周年記念論集に関することが、朝日新聞デジタルで紹介されています。

 6月13日の朝日新聞デジタルに、「人口最少の町に残る古文書を追って 掘り起こす江戸時代の山村の活気」という記事が出ています。人口が全国最少の町、山梨県早川町に残る古文書を調べる「中央大学山村研究会」の活動を紹介した記事です。

 1991年に始まった「中央大学山村研究会」は、中央大学に関係する大学院生、学部生の有志が、2023年1月現在の人口が1,010人という全国最小の町であるものの、近世の山村に関する史料が豊富に残る山梨県早川町を調査しているもので、創立30周年を記念して今年の2月の『山村は災害をどう乗り越えてきたか』を刊行しています。

 『山村は災害をどう乗り越えてきたか』については、ちょうど今月発行された『地方史研究』第422号の「新刊案内」に、熊谷市立図書館の学芸員である大井教寛氏が詳細な紹介を書かれているのでそちらに譲りますが、一般的に脆弱で貧窮に思われている山村のイメージを大きく覆す、豊かな暮らしぶりが見えます。

 「中央大学山村研究会」のことは聞いたことがありますので気になっていたのですが、中央大学を中心にいろいろな人たちがかかわっていて、非常に息の長い調査が行われているわけですが、それだけフィールドである早川町が魅力あふれる場所だということでしょう。早川町には一度行ったことがあるのですが、早川沿いの狭い地域にこれほどまでの史料が残っていることに驚かされるとともに、全国にはまだきっと多くの魅力的な史料が眠っているのではないかと思わずにはいられません。まだまだ地域の歴史の掘り起こしができる場所があるということは、歴史にかかわる人間にとっては、まだまだ頑張らなきゃならないと思わせてくれます。

2023/06/11

本来お金をかけるべきところに金をかけない。行政は文化をきちんと理解していない。

 6月7日の「日本図書館協会」ホームページのお知らせ一覧に、「「図書館非正規職員の処遇にいてのお願い」を都道府県知事、市長、東京23区長へ送付しました。」と出ています。昨日、日本図書館協会の植松貞夫理事長らが記者会見したので、各紙にニュースとして出ていますね(朝日デジタルは6月6日付け、東京新聞Webが6月7日付け)。

 日本図書館協会の調べでは、2022年の国内公立図書館の職員数約4万人のうち、4分の3が非常勤や派遣などの非正規職員で、08年に比べて約3割増、それに対して専任職員は約3割減ということです。

 その非正規職員の約6割が、図書の専門職である司書・司書補の有資格者ということなので、「専門的なスキルが必要な図書館の業務は、すべて非正規職員がやっています」という東京新聞の記事は、おおげさな話ではありません。

 本来専門職は正規で採用すべきです。何故ならば、非正規では雇用が安定しないため、専門的な知識が職場に受け継がれていきにくい、その職員がいなくなってしまうと引き継ぐ人がいなくなってしますうということが起こりえるからです。もちろん正規職員でも、頻繁に移動するようではダメで、専門職として通常の職員とは別の異動をさせるようにすべきです。

 近年では図書館司書に限らず、博物館学芸員なども非正規で回すという状況になっていますが、これら専門職は安定した雇用のなかでこそ、その役割が活きてきます。このような部分にこそお金をかけるべきで、それができないようなところは、文化的に低いと考えざるを得ません。残念ながら現代の日本は、そういうところが多いように思います。                                                                                                                                                                                                                                                    

2023/04/08

滋賀県立公文書館の「公文書館所蔵資料を用いた学習指導案集」、すごく参考になります。史料を替えれば、他の地域でも使えそう。

  昨年9月に滋賀県が誕生して150年を迎えた記念事業として、県内小中学校・高等学校の協力を得て作成した「公文書館所蔵資料を用いた学習指導案集」が、2023年3月31日刊行の滋賀県立公文書館情報紙滋賀のアーカイブズ第13号として刊行されています。

 ただ、これには先行するものがあり、2022年3月31日付けの『滋賀のアーカイブズ』第12号には、「『歴史公文書が語る湖国』を用いた授業指導案」が掲載されていて、いわばこちらが「県政150周年記念特集」その1という感じのようです。また、これらは滋賀県立公文書館の学校連携事業とされていて、公文書館ホームページの学校連携のところにもアップされています。

 さらに、実はこの事業にも先行するものがあり、それが『歴史公文書が語る湖国』という、滋賀県立公文書館所蔵の特定歴史公文書等を利用した書籍です。さらにこの書籍は、明治150年特別展「湖国から見た明治維新」がきっかけで作成されたということですから、自分のところにある宝をとことん利用しているわけなのです(このあたりの詳細については、こちらに出ていました)。これはすごいですよ!

 静岡県でも、過去に『静岡県史』で集めた史料を活用する意味で、『資料に学ぶ静岡県の歴史』という小冊子や、「授業の種」という『図説静岡県史』の画像資料をもとに作成した補助教材が作成されていますが(ともに、「静岡県歴史文化情報センター」のホームページにアップされています)、滋賀県立公文書館の規模ではないですね(滋賀県は専門の方がじっくり取り組まれているのに対して、静岡のは教員が片手間でやっているので、レベルの差が断然違います。やるなら、ちゃんと滋賀県みたいにやらないと)。

 滋賀県の学習指導案、静岡の史料に替えれば、利用できそうな気がします(まぁ、静岡県は近現代史料をきちんと集めていないので、替えられる史料があるかどうか分からないですけど)。

2023/03/03

自治体史の編さんは、事務局と執筆者との間に信頼関係が築けないと大変です。

 『世田谷区史』でトラブルになっているようですね。2月28日の朝日新聞デジタルに、「世田谷区史の著作権は誰に? 執筆者と区、トラブル防止承諾書で争い」という記事が出ています。

 自治体史の編さんで、執筆者とトラブルになることは時々ありますが、そもそも自治体史を編さんする際には、事務局と執筆者との間で信頼関係を築いていないといけません。というのは、過去の出来事とは言え、行政的に出せない(あるいは出したくない)情報があることがあり、それを執筆者が理解したうえで、出さないもしくは一部だけ出すなどの配慮をしてくれないと、自治体史そのものを出さないということになりかねないからです。過去にそのような問題でトラブルになった自治体史がいくつもあります。

 執筆者からすれば、学問に制約が付くことはおかしいと考えるのは当然といえば当然なんですけど、そもそも当該自治体の仕事ととしてやるわけですから、依頼主である自治体が希望することは、ある程度受け止めるという対応が必要になってくるわけです。事務局とうまい関係を築ければ、事務局側もできるだけ情報を出せるように努力してくれますが、事務局とは言え、自治体内の人間ですから、限界があるわけです。事務局側からすれば、そこを理解して欲しいのですが、時に学者であることを全面に出される執筆者がいると、板挟みになってどうにもならなくなってしまい、結局は上からの圧力に負けて、執筆者の意向に沿えない結果になってしまいます。

 私は執筆者側も、事務局側も、どちらの経験もあるので、その厳しさは分かるのですが、できれば、執筆者側がもう少し行政内での事務局の立場を理解してあげることが、執筆者にとってもメリットがあると思います。仮に自分が執筆する際には出せなかった内容でも、「時の経過」により、いつかは出せるようになるはずです。自治体史を作るにあたり、何が一番大事なのかといえば、今まで表に出ていなかった内容が世に出ることが大事なのです。それが自分の実績にはならなくても、近い将来それが世に出させるようになった際に、正しい判断のもとで世に出るように下準備しておくことが必要だと思います。

 『世田谷区史』の件は、事務局と執筆者との間の信頼関係がかなり揺らいでるようで、何度か事務局とトラブルになっているようですので、関係修復はかなり厳しいかもしれませんね。事務局側の上の人が変わって対応が変わるか、執筆者が怒ってこれ以上協力しないということになるかしないと、このトラブルは残念ながらまだ続くかもしれません。

2023/02/12

第5次「子どもの読書活動推進に関する基本的な計画」の案に関するパブリック・コメント(意見公募手続)が実施されています。

  2月9日から、文部科学省において、第5次「子どもの読書活動推進に関する基本的な計画」の案に関するパブリックコメントが実施されています。

 「第5次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」案」は、第4次基本計画が閣議決定された平成 30 年4月以降、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(以下「読書バリアフリー法」という。)の制定、第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」(以下「第6次学校図書館計画」という。)の策定等を通じ、子どもの読書環境の整備が進められているとする一方で、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、GIGA スクール構想による学校の ICT 環境の整備等により、子どもたちを取り巻く環境が大きく変化しており、子どもの読書活動にも影響を与えている可能性があるとの認識の基づいて、子どもの読書活動の推進を目指して、新たな「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」として立案されたものです。

 小学4年生から高等学校3年生を対象とした、5月における1か月間の平均読書冊数に関する調査によると 、平成 13 年度と令和4年度を比較すると、小学生 6.2 冊から 13.2 冊、中学生 2.1 冊から4.7 冊、高校生 1.1 冊から 1.6 冊と、いずれの学校段階においても読書量は令和4年度の方が多く、第4次基本計画の初年度に当たる平成 30 年度(小学生 9.8 冊、中学生 4.3 冊、高校生 1.3 冊)と比較しても、令和4年度の読書量の方が多い一方で、令和4年度の1か月に本を1冊も読まない子どもの割合である不読率は、小学生 6.4%、中学生 18.6%、高校生 51.1%であり、高校生の不読率は、小学生、中学生に比して、高い状況にあります。新型コロナウイルスによる各学校の臨時休業等により、児童生徒による学校図書館へのアクセスが一定期間制限され、図書館においても、臨時休館や開館時間の短縮、入館人数の制限等を余儀なくされたことが、子どもの読書活動にも影響を与えた可能性があると考えることもできますが、中高生はスマホ所有率が高く、特に高校生はおそらくほとんどの生徒が個人のスマホを持っていて、本を読むよりはスマホで動画を見ることが多くなっているのではないかと想像されますから、不読率が50%を超えるという状況になっているのでしょう。学力の低い生徒にとっては、漢字や読み取りの難しい文章よりは、自分の好きな動画を(特に意識せずとも勝手に情報が与えられるわけですから)見たり、マンガを読む方が簡単に楽しめるわけですから、なおさら読書はしないのでしょう。

 こう考えると、小中学生はともかく、高校生の読書活動をするというのは、別に考える必要があり、どちらかと言えば、大人への読書活動の推進と一緒に考える方が良いと思われます。ちなみに、パブコメの締め切りは3月1日15時までとなっていますので、ぜひ意見を送りましょう!

2023/01/14

国文学研究資料館が、電子展示室「書物で見る 日本古典文学史」を公開しています。

 国文学研究資料館展示室で定期的に開催している通常展示「書物で見る 日本古典文学史」が、電子展示室として公開されています。

 上代から明治初期までの文学を、書物(古典籍)によってたどるもので、どの時代も歴史の教科書で名前を見るものが多く出ています。

上代-奈良時代以前の文学:古事記、日本書紀、豊後国風土記、懐風藻、万葉集

中古-平安時代初期の文学:文華秀麗集、句題和歌(大江千里集)、

             東遊歌図・風俗、竹取物語、日本霊異記

中古-平安時代中期・後期の文学:本朝文粋、古今和歌集、和歌九品、蜻蛉日記、

                伊勢物語、菅家文草、京極御息所歌合、

                土佐日記、枕草子、源氏物語

中古-院政期の文学:新撰朗詠集、散木奇歌集、とりかへばや物語、今昔物語集、

          金葉和歌集、俊頼髄脳、今鏡、江談抄

中世-鎌倉・南北朝時代の文学:新古今和歌集、宴曲集、平治物語絵巻、増鏡、

               方丈記、近代秀歌、住吉物語、平家物語、

               十六夜日記、徒然草

中世-室町・安土桃山時代の文学:正徹物語、宗安小歌集、浦島太郎、義経記、

                道成寺縁起、新撰菟玖波集、文正草子、

                十二類絵巻、曾我物語、舟弁慶

近世-江戸前期の文学:草山集、後水尾院御集、勢語臆断、大坂独吟集、

           おくのほそ道、古学先生詩文集、挙白集、紅梅千句、

           笈の小文、去来抄

近世-江戸中期の文学:唐詩選国字解、冷泉為村卿百首和歌、源氏物語玉の小櫛、

           古今狂歌袋、誹風柳多留、作詩志彀、六帖詠草、

           寐惚先生文集、新花つみ、傾城禁短気

近世-江戸後期の文学:如亭山人藁、山陽詩鈔、志濃夫廼舎歌集、昔話稲妻表紙、

           南総里見八犬伝、黄葉夕陽村舎詩、桂園一枝、おらが春、

           椿説弓張月、東海道中膝栗毛

近代-明治時代初期の文学:牛店雑談 安愚楽鍋、斉武名士 経国美談、

             怪談 牡丹燈籠、埋木廼花、明治十家絶句、

             新体詩抄 初編

 初めて見る書籍もありますが、教科書で名前だけ見たことがある書籍の、写真とは言え現物を見ると、なんとなく親しみがわいてきますね。

2023/01/10

思うことを誰かと共有できる場があると、日常は少し楽しくなりますよね。

  1月8日の中日新聞デジタル静岡版で、「「人と人を結ぶ場に」 浜松の男性、アパートの一室で書店営む」という記事が出ています。

 「ここは人と人を結ぶ場であってほしい」と、アパートの一室で本屋「フェイヴァリットブックスL」(浜松市浜北区中条)を営むご店主が、「読んでほしい」と思った本のみを揃えて、2016年秋に開いた書店は、家庭や職場以外の第三の居場所「サードプレイス」を目指しているとのことです。

 ”you can know a man by the books he keeps in his library.”(本棚を見れば、その人がわかる)という言葉があるように、本って、その人の個性がでますから、この書店もご店主の思いが詰まっているんだと思います。こういう場所が近くにあると楽しいですよね。

 なかなか自分の思いを表に出せない世の中で、思いを誰かと共有できる場があると、そこにいるだけで気持ちが楽になります。でも、現代ではそういう場所って職場はもちろん、悲しいことに家庭でもない、それ以外の「サードプレイス」に求めることになってしまいます。最近キャンプ、それも一人キャンプがブームなのも、そういう要素があるのかもしれません。でも、やっぱり人間は独りは寂しいですから、誰かと共有できる場が欲しいんですよね。

 「フェイヴァリットブックスL」は、「料理の本が多く、ビジネス書は置いていない。バランスは偏っている。でも、店主の意志が感じられないとおもしろくない」というご店主と、思いが共有できれば、とても幸せな「サードプレイス」になるでしょうね。こんな場所、近くに欲しいなぁ😄

2023/01/02

江北図書館、100年以上ものあいだ地域住民が運営を続けてきたって、素晴らしいですね。

  12月31日の朝日新聞デジタルで、「養老孟司さんもはまった居心地 予算3万円のタイムスリップ図書館」という記事で、滋賀県最古の私設図書館である江北図書館について紹介されています。

 江北図書館の前身は、1902年に弁護士杉野文彌により創設された杉野文庫で、1906年12月24日、伊香郡役所の全面的な支援を得て、寄付金1万円と170者を超える個人・法人等からの寄贈図書を加えた合計8,782冊をもって、財団法人の認可を取得し、翌年1月8日に「財団法人江北図書館」として開館しています。1926年の郡制廃止までは、伊香郡役所の全面的支援を得て運営されていたとのことですが、その後1932年に杉野が没すると、運営は極度に困難となりながらも、アジア太平洋戦争を生き延び、今日に至るとのことです。

 1975年から使っている現在の建物は、かつては郡農会だった1937年に建築された木造モルタル建築の築85年の建物で、長く風雪にさらされ続けてきたため、建物の老朽化が激しく、そのうえ、耐震・耐火・盗難の備えがないことから、修繕計画が立てられているのですが、私立図書館は、図書館法の規定により公的資金を受けることができないため、「滋賀『江北図書館』120年続く私設図書館を未来に繋ぐ修繕プロジェクト」としてクラウドファンディングが開始されています。

 今年の11月には、「個人が設立して100年以上ものあいだ地域住民が運営を続けてきた、他に類を見ない私立図書館」であるとの理由から、「第4回 野間出版文化賞特別賞」を受賞しているという素晴らしい図書館です。この貴重な図書館活動を今後も続けていけるように、協力したいですね。

2022/12/22

リニューアルした「国立国会図書館デジタルコレクション」、検索のヒット数がめちゃめちゃ多くなりました。

  「国立国会図書館デジタルコレクション」がリニューアルされましたね。Twitterでは、早くもいろいろな反応がありますが、好意的な反応が多いように見受けられます。

 まずなによりも、全文検索可能なデジタル化資料が増加しました。令和2年12月までにデジタルコレクションに登録された図書・雑誌などのデジタル化資料がテキスト化され、全文検索可能な資料が現行の5万点から約247万点に増加しています。キーワード検索をかけると、ヒットする数がものすごいです。

 プレスリリースによると、閲覧画面が改善され、書誌情報の表示位置を変更し、コンテンツの閲覧画面を大きくできるようになったり、デジタルコレクションから切り取った画像や手持ちの画像、またはウェブ上にある画像を使って、デジタルコレクションに収録されているインターネット公開(保護期間満了)の図書・古典籍の中から類似の図版(図、挿絵、写真等)を検索することが可能になったり、国立国会図書館オンライン、国立国会図書館サーチ、デジタルコレクションのいずれかのサイトでログインすれば、3つのサイト全てをログイン状態で利用できるシングルサインオンが可能になったりしています。

 とにかく検索可能件数が格段に多くなったことで、いろいろな資料がヒットするようになって、より良くなりました。

 また、『びぶろす』95号で、「調べ方を調べる」が特集になっています。「パスファインダー」のことや、「リサーチ・ナビ」のリニューアルなどが書かれていて、参考になります。

2022/12/14

東洋文庫所蔵の「菱川師宣絵本」が公開されています。

  東洋文庫が、「菱川師宣絵本」の画像を、Toyo Bunko Media Repositoryで公開しています。

 『岩崎文庫貴重書書誌解題Ⅹ』に収録された、東洋文庫所蔵の29点の「菱川師宣絵本」です。

 『大和絵づくし』や『浮世続』、『東海道分間繪圖』などを見ることができます。Toyo Bunko Media Repositoryは、動きも早く、操作も簡単なので、ストレスなく見ることができて、大変良いですよ。

2022/11/05

全国学校図書館協議会(全国SLA)による、「第67回学校読書調査」の結果が公開されています。

 全国学校図書館協議会(全国SLA)が、2022年6月第1・2週に、全国の小学生4,733人、中学生4,552人、高校生4,806人を対象に実施した、第67回調査(2022年)の結果が公開されています。

 調査項目は、

 問1:5月1か月間に読んだ本の冊数

 問2:5月1か月間に読んだ雑誌の冊数

 問3:タブレットやパソコンなどを使った学習の際の意識

 問4:電子書籍の読書経験

 問5:今の学年になってから読んだ本の名まえ

 2021年5月1か月間の平均読書冊数は、小学生は13.2冊、中学生は4.7冊、高校生は1.6冊、不読者(5月1か月間に読んだ本が0冊の児童生徒)の割合は、小学生は6.4%、中学生は18.6%、高校生は51.1%です。相変わらず高校生の不読者の割合が多いですね。

 なお、2022年10月27日付けの読売新聞オンラインに、「小中高生、電子書籍に比べ「紙の本読みやすい」…読書傾向調査同調査」というタイトルで、この調査結果についての記事が掲載されており、電子書籍の読書経験がある小中高生は紙の本の方が読みやすいと感じる傾向にあることがわかったとされています。

2022/10/23

公益財団法人文字・活字文化推進機構の、冊子「いま、なぜ「紙」の教科書なのか」が公開されています。

 小中高校へのデジタル教科書の本格導入が、2024年度との発表を受けて、デジタル教科書の利点ばかりを強調する文科省に対して、作家、学者、新聞・出版関係者、学校図書館関係者、超党派の国会議員らによる「活字の学びを考える懇談会」が、その意義を検討した内容をまとめたのが、冊子「いま、なぜ「紙」の教科書なのか」です。

 冊子「いま、なぜ「紙」の教科書なのか」での意見は、大半が「「紙」の教科書をメインとし、年齢・能力に応じてデジタル教科書を補助的に活用する」というものです。

 個人的にはこの意見に賛成です。デジタルになれば、今までの問題が解決できると思われている風潮に、そもそも疑念を感じています。アナログがデジタルになったからといって、使う人間が適切に使用しなければ、問題は何も解決しません。最近の出来事で言えば、牧之原市の川崎幼稚園での痛ましい事件でも、出席確認をデジタル化していたようですが、適切に使用しなかったことも1つの原因であったようです。あくまでも道具なのですから、デジタルを過信してはいけません。

 教科書の話に戻すと、デジタル教科書の情報量の多さは確かに魅力的です。しかし、近年「紙」の教科書をまともに読めない子どもが多いように思います。本文があり、欄外に注があったり、写真や図表があったり、またそれらの説明書きが加わっているという従来型の「紙」の教科書ですら、本文を正しく読み取れず、ましてや欄外の写真や図表、またその説明書きの情報までは読み切れないという場面に出くわしている者としては、デジタル教科書では、明らかに消化不良に陥ると思います。デジタル教科書はかなり工夫されていて、動画を見れたり、複数の資料を確認できたりします。ただし、現在でもデジタル端末で調べながら授業をすれば似たような状況は作れますが、初めからいろいろなものが紐づけされているのは便利ですから、その部分だけを利用して使えば良いのです。デジタルのデメリット、紙のメリットのエビデンスはいろいろ出ていますが、個人的経験でもデジタルですと、視覚へのインパクトだけが強くて、他の感覚への影響が少ないからか、紙よりも記憶の定着があまり良くないような印象があります。

 おそらく予定通り、2024年度からデジタル教科書が導入されるでしょうが、「紙」教科書を使用できる余地を残して欲しいということは、強く思います。