続・人間老いやすく、学成りがたし: 自治体史の編さんは、事務局と執筆者との間に信頼関係が築けないと大変です。

2023/03/03

自治体史の編さんは、事務局と執筆者との間に信頼関係が築けないと大変です。

 『世田谷区史』でトラブルになっているようですね。2月28日の朝日新聞デジタルに、「世田谷区史の著作権は誰に? 執筆者と区、トラブル防止承諾書で争い」という記事が出ています。

 自治体史の編さんで、執筆者とトラブルになることは時々ありますが、そもそも自治体史を編さんする際には、事務局と執筆者との間で信頼関係を築いていないといけません。というのは、過去の出来事とは言え、行政的に出せない(あるいは出したくない)情報があることがあり、それを執筆者が理解したうえで、出さないもしくは一部だけ出すなどの配慮をしてくれないと、自治体史そのものを出さないということになりかねないからです。過去にそのような問題でトラブルになった自治体史がいくつもあります。

 執筆者からすれば、学問に制約が付くことはおかしいと考えるのは当然といえば当然なんですけど、そもそも当該自治体の仕事ととしてやるわけですから、依頼主である自治体が希望することは、ある程度受け止めるという対応が必要になってくるわけです。事務局とうまい関係を築ければ、事務局側もできるだけ情報を出せるように努力してくれますが、事務局とは言え、自治体内の人間ですから、限界があるわけです。事務局側からすれば、そこを理解して欲しいのですが、時に学者であることを全面に出される執筆者がいると、板挟みになってどうにもならなくなってしまい、結局は上からの圧力に負けて、執筆者の意向に沿えない結果になってしまいます。

 私は執筆者側も、事務局側も、どちらの経験もあるので、その厳しさは分かるのですが、できれば、執筆者側がもう少し行政内での事務局の立場を理解してあげることが、執筆者にとってもメリットがあると思います。仮に自分が執筆する際には出せなかった内容でも、「時の経過」により、いつかは出せるようになるはずです。自治体史を作るにあたり、何が一番大事なのかといえば、今まで表に出ていなかった内容が世に出ることが大事なのです。それが自分の実績にはならなくても、近い将来それが世に出させるようになった際に、正しい判断のもとで世に出るように下準備しておくことが必要だと思います。

 『世田谷区史』の件は、事務局と執筆者との間の信頼関係がかなり揺らいでるようで、何度か事務局とトラブルになっているようですので、関係修復はかなり厳しいかもしれませんね。事務局側の上の人が変わって対応が変わるか、執筆者が怒ってこれ以上協力しないということになるかしないと、このトラブルは残念ながらまだ続くかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿