7月26日に開催された第89回公文書管理委員会ですが、メインのテーマは「デジタルを活用した確実かつ効率的な公文書管理」です。
配布資料のうち、WGによる「デジタル時代の公文書管理について」という資料から、個人的に気になった点をあげておきます。
P7:<行政文書ファイルに同一年度内の行政文書しかまとめない運用の見直し>
○ 積み上げ型や循環型(繰り返し型)の実務を踏まえれば、相互に密接に関連する行政文書 を、その作成・取得日が4月1日の前か後かというだけで、別の行政文書ファイルにまとめる、あるいは、別のフォルダに格納するということは、業務の遂行、事後の文書の検索、経緯の跡付け・検証の利便性など、様々な観点から支障が大きいと考える。
○ このため、相互に密接な関連を有する文書について、年度を越えて一つの行政文書ファイルにまとめられるようにすべきであり、本年度(令和3年度)から作成している文書を含めて対応ができるよう、速やかに実現すべきである。一方で、長期にわたって一つの行政文書ファイルにまとめる恣意的な運用が行われるのは適切ではなく、2年度を超えないこととすることが適当である。
今までは、原則年度単位で文書ファイルが作られていたわけですが、それを変更するということです。現状において、単年度で終了する業務はあまり無いと思います。あるいは、その年度の業務はいちおう当該度内で終了するけれど、次年度も同じ業務があるってことが多いと思いますので、その意味では現実的な変更ですし、その年限も2年度を超えないようにとしている点は評価できます。ただし、同じ文書ファイルのまとめという問題に関して、次の点は注意しなければなりません。
P9:<行政文書ファイルのまとまり>
○ 行政文書ファイルのまとまりをどのようにするかも検討課題となる。行政文書の管理の効率性と検索可能性を踏まえれば、行政文書ファイルについては、年度別や政策決定など、大括りでまとめることが一つの合理的な方法と考えられる。
○ 一方で、一つの業務のまとまりの中で保存期間や移管・廃棄が異なる場合や、段階で分ける場合もある。その場合に、どのように行政文書ファイルを構成するのかなど、行政事務の効率性、RS確認・廃棄協議の適切・効率的な実施の観点等から検討が必要であり、全省庁統一的な運用を見据えて、速やかかつ実務的な検討が求められる。
2つ目の○のような保存期間や移管・廃棄が異なる場合のまとめ方は、きちんとしたルールを定めておかないと、分からなくなるだけでなく、恣意的な運用が行われる危険性があります。
P10~11:4.保存(長期保存)に必要な措置
○ 長期保存用のフォーマットへの変換や文書のライフサイクルの進行管理が適切に行われるよう、外部記録媒体に保存するのではなく、サーバ内(クラウドの保存領域内)で保存することが望ましい。(特定秘密文書や極秘文書を除く。)
なお、紙媒体で管理される文書や、業務システム内で管理されるデータ(行政文書)は、書の保存・管理のためのシステムの外に置かれることとなる。これらの文書について、どのように行政文書のライフサイクルの管理を効率的に行うかも、検討が必要である。
P11の2つ目の○の、なお書きですが、しばらくは紙・データ併用で運用され、徐々にデータが主になるようにしていくわけですが、それでも紙は残るはずですので、それが恣意的に運用されないように気を付けなければならないでしょう。
P12:<国立公文書館等に移管する30年保存文書の保存期間の見直し>
○ 法律、条約、政令、予算、閣議決定等については、公文書管理法施行令により、保存期間は30年であり、満了時には移管されることになっているが、デジタルの文書を行政機関において長期に保存することについては、リスクがあるとの指摘もあり、より早期に国立公文書館等に移管しつつ、行政機関において必要な場合には、継続して保存しておくことが考えられる。
○ 具体的には、30年で移管することとなっている文書の保存期間を20年に短縮し、早期に移管し、国民の利用に供することが考えられる(秘密文書を除く。)。
保存期間の見直しというタイトルですが、実際は文書の公開年限の問題で、現状は「30年ルール」、つまり「30年経った文書を公開する」という方針で行われているわけですが、これを短縮しようというわけです。現在イギリスなどで、このような動きがあるわけですが、それに歩調を合わせるということですね。これに関しては、現状の30年でも出せない文書というものは当然あるわけですが、それ以外はできるだけ早く公開しようとするというのは良いことだと思います。
P12:<情報公開請求に伴う保存期間の延長と移管について>
○ 国立公文書館等に移管すれば、多くの国民が利用の機会を得られるが、現行制度では、情公開法に基づく開示請求が続いた場合には、保存期間を延長し続け、その間移管ができなくなっているが、発想を変えることで、両制度の調和を図ることが考えられる。具体的には、デジタルであれば複製が容易であるため、情報公開請求があった場合には、複製で対応しつつ、移管の手続を進められるようにすることが考えられる。また、外務省から外交史料館に文書を移管する場合も、こうした対応が可能と考えられる。
情報公開法が施行されたことで、それまで見れていた文書が見れなくなったという経験をした方が多いでしょう。上記の考え方で、それが解消されるとは思えません。情報公開のルールに馴染んでしまった行政が、そう簡単に発想を変えることができるとも思えませんが、何らかの検討をしようという点は評価しても良いでしょう。
また、複製、つまり写しでの対応というのが、この後出てくる原本、正本という問題に関して、若干気になります。
P15:1つ目の○の中の、2つ目の黒ポツ
・検討段階で当面の間のみ保存しておく文書を入れておくフォルダには、1年未満保存のメタデータを付与し、1年を経過する前のタイミングで、削除するか、1年以上保存の適切な行政文書ファイル内で継続保存するかを選択するようにする。
これも、恣意的な運用がなされないか、若干気になりますし、「1年を経過する前のタイミング」って、つまり年度末ってことですが、そのタイミングで文書の保存、削除の判断をする時間があるかどうか。自分的には、その時期にはこんなことやっている暇は無いですが。
P17:
○ RSが廃棄と確定された文書について、保存期間満了日の約1年半前になれば、該当文書について廃棄か延長かの選択を行うことが求められる。廃棄を選択した場合には、システム内で廃棄協議の事前審査を行う手続に移る。
1年半前って、ずいぶん中途半端な時期ですし、年度途中のタイミングで、以前の文書のことまでやっている時間があるのでしょうか?
P18:
○ 一方、OCRで読み取った場合は、データとして扱えるものの、文字の読み取り誤りが生じ得るものであり、元の文書との同一性が担保されない(担当者が転記した文書と同じ)。OCRで読み取った上で、元の紙媒体の文書を廃棄することとしてよいかは、業務・文書の性質・内容や、元の文書との同一性の確認の必要性とそのための方策(例:重要な数字部分を読み合わせる、半年間は紙を保存しておく)等を踏まえて、各行政機関において判断すべきものである。
日本語OCRはまだまだ十分ではありませんから、それに関する配慮がなされているのは評価できますが、元の紙媒体文書の廃棄の判断は各行政機関でやるのではなく、統一ルールが望ましいですね。
P19~20:<正本・原本について>
○ デジタルについては複製が容易である。「原本」そのものを管理しようとする場合にコストがかかる場合もあり、特定が困難な場合がある。他の法令の規定により「原本」が必要であれば、適切に管理する必要があるものの、公⽂書管理法が求める意思決定や事務・事業の合理的な跡付け・検証という観点からは、「正本」で⾜りるという考えでよい。
○ ⼀⽅で、「正本」が権限ある⾏政機関で管理されている⽂書とすれば、公⽂書管理については、各⾏政機関の⻑の下で、各⽂書管理者が⼀義的な責任を有しているため、正本を管理するという概念はトートロジーであり、どの電⼦媒体が正本かを特定する必要性もない。
○ なお、⾏政⽂書の保存期間、扱い等を考える上で、「写し」(⽂書の主管部局が管理している⾏政⽂書の複製物)という概念は有⽤であり、その反対概念として「正本」(⽂書の主管部局が管理している⾏政⽂書)という⽤語を⽤いることはあり得る。
これで大丈夫なんでしょうか?原本性の問題は、裁判等で証拠資料として用いる際に問題となるわけで、かつてマイクロフィルムも原本性が問題となったことがありましたが(これはマイクロフィルムに原本性があるとの判断が明確になったことで、マイクロフィルムが行政に広まったということがあります)、現状においてデジタルデータの原本性は、はっきりしていないと思います。
また、「公⽂書管理については、各⾏政機関の⻑の下で、各⽂書管理者が⼀義的な責任を有しているため、正本を管理するという概念はトートロジー」って、そうじゃないから、森友・加計問題や桜の会の問題などが起こり、今日かつてないほど公文書が注目を集めることになったのではないのでしょうか?
「デジタルを活用した確実かつ効率的な公文書管理」は、今後数年間かけて進んでいくわけですが、今回の報告を見る限り、上記以外にも、かなり危うい問題が潜んでるように感じます。行政の概念って、一般国民の感覚とやや違う部分があるので、今後もこの問題には注目していく必要があります。